「面接で何を聞かれるんだろう」
「たぶん、うまく答えられない」
転職の経験が少ない人ほど、この不安は大きくなります。
理由ははっきりしていて、練習する場所がないからです。
家族に面接官役を頼むのは気恥ずかしい。転職エージェントに模擬面接をお願いするのも気後れする。想定質問を書き出してはみたけれど、それが本番で通用するのかは分からない。
そのまま当日を迎えて、初めて深掘りされて固まる。
これは能力の問題ではありません。練習の順番の問題です。
私はこれまで5回転職し、現在は採用人事として面接する側にいます。両方を経験した上で言うと、AIは面接の練習相手として優秀です。
特に効くのが、音声で会話できる機能です。
文字でのやり取りだけでは、本番で使えるところまで届きません。理由は後で書きますが、ここを飛ばすと練習の効果が半分になります。
この記事では、職務経歴書を用意するところから、声に出して反復するところまでを5ステップで紹介します。
全部で約50分。 そのままコピーして使えるプロンプトも載せています。
全体の流れ
| やること | 時間 | |
|---|---|---|
| STEP1 | 職務経歴書から想定質問を出してもらう | 5分 |
| STEP2 | 想定問答をAIに作ってもらう | 10分 |
| STEP3 | 自分の言葉に直す(ここが山場) | 15分 |
| STEP4 | 音声機能で通し練習をする | 20分 |
| STEP5 | 詰まった質問だけ反復する | 都度 |
先に一つだけ言っておきます。
STEP2で、AIに回答を作ってもらいます。ただし、その文章はSTEP3で崩します。
作った文章をそのまま覚えるのが目的ではありません。作ってみないと、自分の答えとの違いが分からないから作ります。
ここが、この5ステップの一番大事な設計です。
STEP1|職務経歴書から想定質問を出してもらう
所要時間:5分
まず、自分の職務経歴書をAIに読ませます。そのうえで、こう頼みます。
あなたは中途採用の面接官です。この職務経歴書を読んで、面接で質問したいポイントを10個挙げてください。
これだけで、自分では思いつかなかった質問が出てきます。
例えば職務経歴書に「採用人数を増やした」と書いてあれば、こうなります。
- 何人から何人に増えたのか
- なぜ増やす必要があったのか
- その中であなた自身は何をしたのか
- どの施策が一番効いたのか
- うまくいかなかったことは何か
採用側は、書いてある文章をなぞって確認したいわけではありません。その経験の中で本人が何を考え、何をしたのかが知りたいので、こう聞きます。
出てきた10個は、そのままSTEP2で使います。
ここで「この質問、答えられないな」と思ったものには印をつけておいてください。あとで効いてきます。
STEP2|想定問答をAIに作ってもらう
所要時間:10分
次に、その10個に対する回答をAIに作ってもらいます。
いま挙げてもらった10個の質問に、私の職務経歴書の内容をもとに回答案を作ってください。1つあたり200字程度で、結論から書いてください。
ここで、多くの記事は「AIに回答を作らせてはいけない」と書きます。
私の考えは少し違います。作ってもらっていいです。 ただし、作った文章を覚えないでください。
作る理由は2つあります。
1|自分の答えとの差が見える
ゼロから考えると手が止まりますが、たたき台があると「ここは違う」「実際はこうだった」と反応できます。修正するほうが、創作するより圧倒的に速いです。
2|構成の型が手に入る
AIが作る回答は、だいたい「結論→背景→行動→結果」の順に並んでいます。この順番自体は本番でも使えます。中身は入れ替えて、骨組みだけもらう感覚です。
問題は、この文章をそのまま覚えてしまうことです。
面接をしていると、暗記した文章はかなり分かります。
- 最初の答えは整っているのに、一段掘ると急に言葉が変わる
- 主語が「私」ではなく「御社」になっている
- 普段その人が使わない語彙が混ざっている
嘘だと思うわけではありません。ただ、準備した文章の外に出た瞬間に話が薄くなるので、そこから先の評価ができなくなります。
だから、次のSTEP3で崩します。
STEP3|自分の言葉に直す(ここが山場)
所要時間:15分
5ステップの中で、ここが一番大事で、一番飛ばされやすい工程です。
「自分っぽく直す」と言われても、慣れていないと基準が分かりません。感覚でやると「まあこんな感じかな」で通してしまいます。
そこで、作業を3つに分けます。
1|音読して、つっかえた単語を消す
これが一番確実な判定方法です。
普段使わない言葉は、声に出すと必ずつっかえます。
「注力いたしました」「寄与しております」「〜という所存です」
こういう表現が出てきたら、自分が普段使う言い方に置き換えてください。「力を入れました」「役に立ちました」で十分です。
声に出してスッと言えない文は、本番でも言えません。
2|固有名詞・数字・実際の出来事を入れ直す
AIには絶対に書けない部分です。
「採用改善に取り組みました」→「採用媒体を2つ止めて、紹介に寄せました」
「チームで連携しました」→「現場の所長3名に、月1回集まってもらいました」
ここが埋まっていない回答は、深掘りされた瞬間に止まります。逆にここさえ入っていれば、多少言い方が下手でも伝わります。
3|文章を、箇条書き3点に崩す
最後に、直した文章を捨てます。
残すのはこの3つだけです。
- 状況(どういう場面だったか)
- 自分の行動(その中で自分が何をしたか)
- 結果(何が変わったか)
文章のまま持っていると、必ず暗記になります。3点だけ持っていれば、本番ではその場の言葉で話せます。
AIに作ってもらった文章は、この3点を見つけるための下書きです。
ここまで来たら、次で声に出します。
STEP4|音声機能で通し練習をする
所要時間:20分
ここからが本番です。AIの音声会話機能を使って、実際に声に出して面接をします。
なぜ声に出すのか
文字でやり取りしていると、答えがまとまった気になります。ところが口に出すと、まったく出てこない。
文章として整理する力と、声で伝える力は別の力です。
面接をしていても、書類は非常によく書けているのに、話すと急に短くなる方はいます。準備していないわけではなく、書く練習しかしていないからです。
STEP3まででは、まだ「書けた」段階です。ここで初めて「話せる」に変わります。
プロンプト
音声モードに切り替えて、最初にこう伝えます。
これから中途採用の面接練習をします。あなたは面接官役です。次の3点を守ってください。 1. 質問は一問ずつ。まとめて聞かないでください。 2. 私が話し終えるまで、途中で口を挟まないでください。 3. 私の回答が抽象的だった場合は、「具体的には」「その中であなたは何をしましたか」と深掘りしてください。 では、1問目からお願いします。
3つとも入れてください。特に2番目は、指示しないと話している途中で反応されて、練習になりません。
録音しておく
可能なら、自分の声を録音して聞き返してください。
たぶん驚きます。
- 「えー」「なんか」が多い
- 話が長い(1分を超えている)
- 結論が最後に来ている
どれも一人で直せる部分です。そして、面接官がまさに気にする部分でもあります。
面接の回答は、まず結論、そのあと30〜60秒が目安です。それ以上長いと、聞いている側は途中で内容を追えなくなります。
STEP5|詰まった質問だけ反復する
所要時間:都度
通し練習をすると、必ず詰まる場所が出ます。
だいたい共通していて、多いのはこの3つです。
- 転職理由の深掘り(「その状況を変えるために、自分では何をしましたか」)
- 志望動機の具体化(「当社のどこにそう感じましたか」)
- 弱みや失敗の質問
特に1つ目で止まる人が本当に多いです。
不満は説明できるけれど、それに対して自分が何をしたかを用意していない。すると面接官には「環境のせいにする人かもしれない」と映ります。本当はそうでなくても、そう見えます。
詰まった質問は、その場で答えを作らず、同じ質問だけを繰り返してもらってください。
いまの質問に、もう一度答えます。同じ質問をしてください。
いつ終わるのか
反復は、終わりを決めないと続きません。判定基準を1つ置きます。
同じ質問に3回答えて、毎回少しずつ言い回しが変わっていればOK。
毎回まったく同じ文章が出てくるなら、それは暗記なので不合格です。
これは面接する側から見ても妥当な基準です。理解して話している人は言い回しが揺れますし、暗記の人は一言一句同じで、そこから少し外れた質問で止まります。
3回言い方が変わったら、その質問は終わりにして次に進んでください。
応用編|求人票を使って「その会社向け」に練習する
所要時間:10分/応募先ごと
ここまでは、どの会社にも共通する準備です。応募先が決まったら、STEP1に戻ります。
今度は職務経歴書に加えて、求人票をそのまま貼ります。
この求人に応募します。職務経歴書と求人票を貼ります。採用担当者として、私に面接をしてください。特に、求人票で求められている経験に対して、私の経験が弱く見える部分を重点的に質問してください。
後半の一文が肝心です。
例えば求人票に「マネジメント経験歓迎」とあるのに、職務経歴書にその経験が見えなければ、こう聞かれます。
「部下を持たれた経験はありますか」
「プロジェクトをまとめた経験はありますか」
「後輩の育成では、どんなことをされましたか」
先に一度聞かれておけば、
「正式な管理職経験はないけれど、この経験なら話せる」
と整理できます。
弱い部分は、隠すより準備しておくほうが強いです。面接官が、そこを聞かないわけがないからです。
面接前日にやるなら、この応用編だけでも効果があります。
使う前に知っておきたい3つのこと
1|職務経歴書をそのまま貼らない
職務経歴書には、氏名、現職の会社名、取引先名、案件名が入っています。貼る前に、社名や個人名は伏せ字にしておくと安心です。
サービスによっては、入力内容を学習に使わない設定にもできます。一度確認しておいてください。
2|企業のことをAIに聞かない
「この会社について教えて」と聞くと、それらしい答えが返ってきますが、事実と違うことが混ざります。
これを信じて面接で話すと、かなり気まずいことになります。「うちはその事業はやっていないのですが」となった場面を、私は実際に見たことがあります。
企業情報は、求人票、採用サイト、決算資料を自分で読んでください。そのうえで、読んだ内容をAIに貼る。AIは、貼った情報を整理するのは得意です。
3|音声機能はサービスによって仕様が違う
音声で会話できる機能の有無や使い勝手は、サービスごとに違いますし、更新も早い領域です。
いま使っているAIに音声モードがなければ、次の方法でも代用できます。
- AIが出した質問を画面に表示させ、自分の答えをスマホの録音アプリに吹き込む
- 聞き返して、STEP4のチェック項目(長さ・結論の位置・口癖)を確認する
やり取りの自然さは落ちますが、声に出すという一点さえ守れば、効果はかなり残ります。
AIでは練習できないこと
正直に書いておきます。
AIで練習できるのは、話す中身と、話し方の基礎までです。何を聞かれるか、どう組み立てるか、どこで詰まるか。ここは十分カバーできます。
一方で、これは難しいです。
- 相手の表情を見ながら、話す長さを調整する
- 空気が固いときに、少し崩す
- 想定外の質問が来たときの、間の取り方
面接は会話なので、最後は人を相手にした練習が必要になります。
そこまでやりたい場合は、転職エージェントの模擬面接が使えます。多くのエージェントで無料ですし、応募先企業の過去の面接傾向を持っていることもあります。
順番としては、AIが先、人が後をおすすめします。中身が整った状態で受けたほうが、限られた模擬面接の時間を「伝え方」だけに使えるからです。
まとめ
面接に、絶対の正解はありません。
採用する側が知りたいのは、きれいな回答ではなく、
何を経験したのか。なぜそう考えたのか。どう行動したのか。そこから何を学んだのか。
という、その人自身の話です。
だから、AIに自分以上に立派な回答を作ってもらう必要はありません。
作ってもらうのは、下書きまで。
そこから自分の言葉に直して、声に出して、詰まったところを繰り返す。
この5ステップを一度通すだけで、
「ここは説明できる」
「ここは意外と答えにくい」
が見えます。
答えにくい場所を本番前に知っているかどうかで、当日の落ち着きはまったく違います。
今日、時間が10分しかないなら、STEP1だけでも構いません。
職務経歴書を読ませて、質問を10個出してもらう。それを眺めるだけで、いま自分に何が足りていないかが分かります。
慣れていない人ほど、AIは頼れる練習相手になります。


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