求人票を読んでも、その会社で実際にどう働くことになるかは分かりません。
給与も、仕事内容も、休日も書いてあります。でも、入ってみないと分からないことのほうが多い。
そこで一つ、応募前に見ておくといい情報があります。
社員の年齢構成です。
私は採用人事として面接する側にいますが、年齢の分布には、その会社が今どういう状態にあるかがかなり出ます。
先に断っておきます。これから書くことは、あくまで私が見てきた範囲での話です。 すべての企業に当てはまるわけではありませんし、当然、例外もあります。
ただ、「この会社はどういう状態なのか」を考える材料にはなります。
30代がいない会社
一番よく見るパターンです。
20代はいる。50代以上もいる。ところが30代が薄い。
考えられる理由はいくつかあります。
1|キャリアの先が見えず、30代で抜けている
上の世代が詰まっていて、任される仕事が変わらない。このまま10年経っても同じではないか。そう考えた人から順に外に出ます。
30代は、動くなら今という判断ができる年齢です。家庭の事情も含めて、まだ選択肢がある。だからこの層が最初に抜けます。
2|過去に採用を絞っていた時期がある
景気が悪かった時期に新卒採用を止めていた、という会社は実際にあります。この場合は、その世代がまるごと薄くなります。
会社の姿勢の問題ではなく、単に当時の事情です。
3|最近になって、急に採用を始めた
長く採用していなかった会社が方針を変えると、若手と年配層の間に空白ができます。
この3つは、外からは区別がつきません。
そして、面接で聞いても、実態はまず出てきません。
「なぜ30代の方が少ないのですか」と正面から聞かれて、正直に答える会社はほぼないと思います。答えられたとしても、当たり障りのない説明になります。そして、そこを深く掘ろうとすると、警戒されます。
現実的にできるのは、この程度です。
- 面接に出てくる人の年齢を見る — 一次、二次、最終と進む中で、どの年代の人が出てくるか
- 会社に行ったときの雰囲気を見る — オフィスにいる人の年齢層、話している様子
- 口コミサイトを見る — 書き込みには偏りがあるので鵜呑みにはできませんが、退職理由の傾向は参考になります
- 採用ページで中途と新卒の割合を調べる — 社員紹介や採用データとして載せている会社があります
最後の項目は、意外と見落とされます。社員紹介に並んでいる人の入社経路を見るだけでも、その会社が中途をどう位置づけているかが分かります。
聞き方を変えれば、答えてもらえる
年齢構成を正面から尋ねるのは難しいですが、角度を変えれば聞けます。
「私も中途で入ることになるので少し不安があるのですが、中途入社の方はどのくらいいらっしゃいますか」
これなら、会社の内情を探る質問ではなく、自分の不安を伝える質問になります。答える側も身構えません。
しかも、返ってくる情報は実用的です。中途が多い会社なら、入ってからなじみやすい。少ない会社なら、最初は外側に立つ覚悟が要ります。
聞きたいことは同じでも、立て方で答えが変わります。 ここは面接全般に言えることです。
どれも決定的ではありません。ただ、求人票だけを見ているよりは、はるかに情報が増えます。
役職者を中途でどんどん補充している会社
これも一つのサインです。
管理職のポジションが、次々と中途採用で埋められている。
社内から昇進する人が少ないということでもあります。
考えられるのは、社歴の長い人が一定のところで見切りをつけている状態です。上が詰まっている、あるいは評価の仕方が納得できない。そういう理由で、あと一歩というところで外に出ていく。
一方で、単純に事業が伸びていて、社内の育成が追いついていないだけということもあります。
この違いは、外からは分かりません。
ただ、面接で会う管理職の方が中途入社ばかりだった場合、そういう会社なのかもしれない、という程度には頭に置いておいてもいいと思います。
なお、これを面接で直接聞くのはおすすめしません。昇進の内訳を尋ねると、社内の事情を探っているように受け取られます。
50代以上が多い会社
年齢層が上に偏っている会社では、こういうことが起こりがちです。
- ポジションが埋まっていて、席が空かない
- 裁量を持てるまでに時間がかかる
- 新しい経験を積む機会が少ない
- そもそも手を動かす人が足りていない
最後の項目は、意外と見落とされます。
判断する人は多いが、実際に手を動かす人がいない。 この状態の会社は、実務ができる人を強く求めています。
入る側から見ると、これは機会でもあります。任される範囲は広くなりますし、動ける人が少ないぶん、成果も見えやすい。
ただし、その先のポジションが空いていないという問題は残ります。この会社で5年、10年働いたとき、自分がどのあたりにいるのか。一度、想像してみてください。
なお、35歳以上の転職はもう普通のことになっています。年齢を理由に動けないと考える必要はありません。
若手を急に増やしている会社
組織の年齢構成を変えようとしている会社は、短期間に若手をまとめて採用します。
これ自体は前向きな動きです。ただ、注意すべき点があります。
教える人がいるかどうかです。
若手が増えても、育成できる中堅層が薄ければ、実質的に放置になります。「早くから任される」と言えば聞こえはいいですが、聞ける人がいない状態は、想像よりきついです。
面接では、こう聞いてみてください。
「入社された方は、最初の半年をどのように過ごされますか」
研修制度の有無より、実態が出ます。
「変革のために採用しています」と言われたとき
これが、この記事で一番注意してほしいところです。
年齢構成が上に寄っている会社ほど、こう言われることがあります。
「組織を変えたいので、新しい視点を持った方に来てほしい」
「今まで手をつけられていない課題を、進めてほしい」
意欲的に聞こえます。実際、経営層は本気でそう思っていることが多いです。
ただ、ここで3つのずれが起きます。
1|現場は、変化を求めていない
経営層が変えたいと思っていても、現場は今のやり方で回しています。困っていないわけではないけれど、変えるコストのほうが大きいと感じている。
そこに外から来た人が改善案を出すと、正論であるほど反発が出ます。
2|経営層も、思っているほどの変化は求めていない
これが一番厄介です。
「変えてほしい」と言われて入ったのに、実際に提案すると「そこまでは」となる。求められていたのは全面的な変革ではなく、今の枠組みの中での改善だった、というケースです。
言っている側に嘘はありません。ただ、「変える」という言葉が指す範囲が、お互いにずれています。
3|変えられない理由が、すでに積み上がっている
歴史のある会社ほど、今のやり方には経緯があります。過去にこういうことがあった、この方法で成功した、この取引先との関係がある。
外から見ると無駄に見えるものにも、たいてい理由があります。
4|そもそも、変える前提条件が違いすぎる
前職で成果を出した方法が、そのまま使えるとは限りません。
予算がない。使えるシステムがない。動かせる人がいない。判断できる会議体がない。データがそもそも取れていない。
前の会社では当たり前にあったものが、ここにはない。やり方は分かっているのに、実行する土台がないという状態です。
この場合、まず土台を作るところから始まります。半年かけて、ようやく前職のスタートラインに立つ。そういうことも普通に起こります。
期待されている変化と、それを実行できる条件が、最初から釣り合っていない。ここが一番大きなギャップになります。
だから、変革を期待されて入る場合は、面接でここまで聞いてください。
「変えてほしいと考えていらっしゃるのは、具体的にどの部分でしょうか」
「これまでに改善しようとされて、進まなかったことはありますか」
そして、答えが返ってきたら、もう一歩踏み込みます。
「そのとき、ネックになったのはどのあたりだったのでしょうか」
ここが一番大事です。
過去に止まった理由は、今も残っている可能性が高いです。そして、その理由を聞き出せれば、そのまま自分の話につなげられます。
「前職でも似た状況がありました。そのときは、まず◯◯から着手して、△△という順番で進めました」
こう返せると、質問が単なる確認ではなく、アピールの場に変わります。
採用する側から見ても、これは印象に残ります。「変えてほしい」と伝えたときに、条件を確認してくる人より、進め方を具体的に話せる人のほうが、一緒に働く姿を想像しやすいからです。
面接で聞くべき一言
ここまでいろいろ書きましたが、応募前に外から分かることには限界があります。
上場企業なら有価証券報告書に平均年齢が載っていますし、採用サイトの社員紹介からも多少は推測できます。ただ、会社全体の平均と、自分が配属される部署の構成は別です。
だから、面接ではこう聞いてください。
「配属予定の部署の年齢構成を教えていただけますか。働くイメージを持ちたいので」
理由を添えるのがポイントです。前向きな質問として受け取られますし、答えづらい質問でもありません。
返ってきた答えで、かなり見えます。
- すぐに具体的な人数が出てくる → 現場の状況を把握している
- 「若い人が多いです」といった大まかな答えが返ってくる → それはそれで一つの情報
- 答えに詰まる、話をそらす → 何か理由があるかもしれない
ここで注意したいのは、深追いしないことです。
年齢構成を細かく確認しすぎると、そこを気にしている人だと受け取られます。一度聞いて、返ってきた答えをそのまま受け取る。それで十分です。
答えの中身だけでなく、答え方のほうに情報が出ます。
本当に聞けるのは、内定が出てから
ここまで「深追いしない」と書いてきましたが、状況が変わる場面があります。
内定が出たあとの、承諾前の面談です。
ここでは立場が変わります。選考中は評価される側ですが、内定後は会社側が来てほしいと思っている状態です。だから、選考中には聞きにくかったことも聞けます。
会社としても、入社後にミスマッチで辞められるほうが困ります。この段階での質問は、むしろ歓迎されます。
前置きは、こうすれば十分です。
「前向きに検討させていただいているので、入社後のイメージをもう少し具体的に持ちたいと思っています」
そのうえで、聞きたいことを聞きます。
- 配属予定の部署の年齢構成
- 直属の上司になる方の年齢と、これまでの経歴
- 同じポジションで過去に入社された方が、どのくらい在籍されているか
- 数年後、どういう役割を期待されているか
選考中にこれを全部聞くと探っているように見えますが、承諾前なら自然な質問です。
そして、ここで答えを渋る会社は、それ自体が一つの情報です。 入ってほしい相手からの質問に対して、答えられない理由があるということですから。
内定が出たら、迷わず聞いてください。判断材料が増えて困ることはありません。
まとめ
年齢構成は、会社を判断する材料の一つでしかありません。繰り返しになりますが、ここに書いたことは私が見てきた範囲の話であって、すべての会社に当てはまるわけではありません。
ただ、求人票に書かれていない情報を読み取るきっかけにはなります。
- 30代が薄い会社では、その背景を考えてみる
- 変革を期待されるなら、どこまでを指すのか、過去に何が止まったのかを聞く
- 配属先の年齢構成は、面接で一度だけ聞く
- そこで働く5年後、10年後の自分を想像してみる
年齢構成が偏っていること自体は、悪いことではありません。若い会社にも、年齢層の高い会社にも、それぞれの働き方があります。
問題になるのは、その会社の状態と、自分がやりたいことが噛み合っていないときです。
早く任されたいのに、上が詰まっている。じっくり教わりたいのに、教える人がいない。腰を据えて働きたいのに、会社が急に変わろうとしている。
こういうずれは、入ってから気づいても動かせません。
年齢構成は、そのずれを入る前に見つけるための手がかりの一つです。
そして、これは入社後に必ず影響が出る部分です。誰と働くのか。上に誰がいるのか。自分がどの位置に立つことになるのか。すべて、年齢構成の中で決まっていきます。
だからこそ、把握できていると働く未来のイメージがつかみやすくなります。
採用ページを見る。口コミを読む。面接で会う人を観察する。内定が出たら、直接聞く。
できる範囲で、ぜひいろいろと調べてみてください。 入る前に分かることは、思っているより多いです。


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